【テキサス教育制度変革】アボット州知事「事実上の全世帯対象」教育資金アカウント制度成立
/2025年5月3日、テキサス州のグレッグ・アボット州知事が、全世帯を対象にした教育資金アカウント(ESA:Education Savings Account)制度に関する法案「Senate Bill 2(SB2)」に署名しました。この法律により、家庭が子どもの教育を公立学校以外で選択するための資金を公的に提供する、大規模な「スクールチョイス(学校選択)」制度が正式にスタートします。
制度のポイント:最大年間1万ドルを教育費として自由に利用可能
SB2によって設立されるESA制度では、以下のような支援が受けられます。
対象世帯ごとの支給額:一般家庭には年間約1万ドル、障がい児には最大3万ドルを支給。ホームスクール家庭には年間2,000ドルの支給枠があります。
使途の自由度:支給された金額は、私立学校の授業料だけでなく、制服代、教科書、家庭教師、学習ツールなど幅広い目的に使用可能です。
開始時期:制度は2026〜27年度の学年から施行される予定です。
誰が対象か?
この制度は「ほぼ全家庭」を対象としていますが、以下の制限も設けられています。
移民ステータスが未確定の生徒(undocumented students)は対象外
年収が連邦貧困ラインの500%を超える家庭の参加は、全体予算の20%までに制限
政治的背景と意義
テキサス州では、過去数十年にわたり保守派が「スクールバウチャー」導入を目指してきましたが、公立教育の影響を懸念する反対勢力により難航していました。今回、アボット知事とダン・パトリック副知事の政治的圧力と選挙戦略により、ついに法案が成立した形です。
アボット知事は署名式で次のように述べました。「子どもがどこに住んでいるかに関係なく、最良の教育を受ける権利を保障することがこの法律の目的だ。」
教育界と地域社会からの懸念
この制度には多くの賛同の声がある一方で、以下のような懸念も挙がっています。
公立学校からの資金流出により、財政難、教師不足、学校閉鎖が進行する可能性
私立学校への資金提供に対する透明性や説明責任が不十分であるとの指摘
財政再配分により、地域の固定資産税が上昇する懸念
特に教育委員会や一部の州議員は、「スクールチョイスが教育格差を広げる結果になりかねない」と強い懸念を表明しています。
テキサス州の新しいESA制度は、アメリカ最大規模のスクールチョイス制度となる可能性があります。保護者にとっては選択肢の幅が広がる一方で、地域社会の公共教育体制に与える影響には今後も注視が必要です。2026年の制度開始を前に、各家庭・学校・行政機関がその準備と対応に追われることになるでしょう。
ソース:Dallas Morning News、San Antonio Express、Axios Texas、Express News
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