テキサス州の外国人不動産購入規制法案、現在の対象国



テキサス州議会で審議中の外国人不動産購入制限法案「SB 17」が最終段階を迎えています。この法案は中国、イラン、北朝鮮、ロシアの非市民による不動産購入を全面禁止するもので、アジア系住民や投資家コミュニティに大きな波紋を広げています。

法案の背景と反対の声

法案は2023年に一度否決されましたが、トランプ大統領の再就任と反移民・反中国政策の強化を背景に、共和党主導の州議会で再び勢いを増し、2025年5月9日(金)に下院を通過しました。特に注目すべきは、グレッグ・アボット州知事がその他の国を対象リストに追加する権限を持つ点です。

2025年5月10日(土)にはオースティンで数百人が抗議デモを実施し、Asian Texans for Justice のアリス・イー氏は「出身国だけを理由に特定の人々を標的にするのは人種差別的です」と強く批判しています」。

◆ SB 17法案とは?その背景と狙い

SB 17は、「国家の敵対勢力(hostile nations)」とみなされる国の政府・政党・企業・個人による、以下のような土地の取得を制限する内容です。

■ 制限される土地の種類

・軍事施設周辺の土地
・電力・石油・水道などインフラに関連する用地
・農業用大規模土地

■ 【明確に定義された対象国(2025年6月時点)】

以下の4か国が「敵対的外国勢力」として明記されています:

1.中華人民共和国(China)
2.ロシア連邦(Russia)
3.イラン・イスラム共和国(Iran)
4.朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮 / North Korea)

上記国籍の個人・企業・政府関係者による、特定の重要土地の取得を制限・禁止するものです。

◆ 一般外国籍者への影響と経済的インパクト

現在、上記4か国以外の国籍を有する個人や企業に対して、直接的な購入制限は設けられていません。ただし、法的・行政的対応の強化により、今後の投資環境に影響が及ぶ可能性もあります。

一方で注目すべき点として:

・中国系投資家の大規模な不動産購入が制限されることで、市場競争が緩和される可能性
・これにより、他国籍の投資家にとっては不動産取得の好機が生まれる可能性もある

また、近年ではテキサス州において、NVIDIAのダラス工場建設をはじめとした外国企業による大規模投資が相次いでいます。こうした背景から、投資・進出を検討する企業にとっては、米国法人設立や現地パートナーとの連携によるリスク分散が重要な戦略となっています。



◆ アジア系住民の懸念と抗議の声

・民間団体「Asian Texans for Justice」は、「出身国を理由とした不動産制限は人種差別を助長する」と抗議活動を展開
・テキサス州下院のジーン・ウー議員は、「アジア系全体が差別の対象になりかねない」と警鐘を鳴らしています。

対象国が限定されているとはいえ、社会的影響や誤解による対応の複雑化も想定されます。

法的な論点と今後の見通し

・SB 17は連邦憲法修正第14条「平等保護条項」に抵触する可能性があり、法案が成立しても法的挑戦が予想されます。
・2024年中の施行を目指していると報じられていますが、訴訟による執行の遅延も想定されます。
・類似の法案SB 147は2023年に廃案となっており、引き続き政治的議論が続く見通しです。

◆ 直接の影響は限定的、だが高度な柔軟性が求められる時代へ

本法案は現時点で対象は一部の国に限られています。それでも、今後の政治的展開や排外主義的な政策拡大の可能性を踏まえ、広い視野と柔軟な投資判断力がこれまで以上に求められています。

アメリカでの投資や事業を成功させるには、最新の法的情報を常に把握し、地域ごとの制度や空気感を理解した上で行動することが不可欠です。

本記事は一般情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。具体的な判断に際しては、必ずテキサス州の弁護士等専門家にご相談ください。

参考記事:Push To Ban Non-citizens From Buying Land Prompts Racism Worries

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